質量欠損現象から導いた物理,宇宙構造

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 第6章.ブラックホール型宇宙 


 この章の概要と結論 
  ブラックホール内部空間と現実宇宙空間は酷似している   


第4章で解説した通り、ブラックホール内部は事象の地平に包まれた裏返しの閉鎖空間である。そしてこの宇宙もその様に観測されている、とも言える。(観測事実) 

この宇宙は巨大なブラックホールの内部世界で自由落下過程であると仮定すれば、かなり都合よく現実宇宙の生誕,現状,将来を説明できる宇宙論が作れる。

外部世界から、外部世界に存在する何か(質量,エネルギー)がこの宇宙が所属するブラックホールに落ち込んでいく。その時、その落下物は超高温だった。それがシュバルツシルト半径を超えて落下ることにより事象の地平で包み込まれた裏返しの閉鎖空間になり、落下物は放射冷却されてこの宇宙が出来上がった、と展開する。(事象の地平は絶対0度)


  
6-1. ブラックホール内部構造と宇宙構造の類似点             

前記したようなブラックホールの内部構造は、現在観測される大宇宙とよく似ている。たとえば、われわれの宇宙は遠方天体ほど大きな赤方偏移が観測され、最遠方は事象の地平(赤方偏移が無限大になる場所)となる。つまり我々は事象の地平でつつまれた中心にいるように観測されている。

また各種の証拠から、宇宙の初期は超高温であり、それが急激に冷却されて現在の宇宙ができたと説明されている。そしてこれらは前項で考えたブラックホール内を自由落下する観測者の視点で見た景色と同じである。

これから宇宙論を構成することを試みた。この宇宙は巨大なブラックホールのシュバルツシルト半径内を自由落下している状態だとすれば、さまざまな観測事実をうまく説明できる。

なお、この落下観測者から見た、このブラックホール内部世界というのは、ある意味、ブラックホールの外である。事象の地平がブラックホールの表面であるというのが正しく、現在確認されている宇宙空間はブラックホール表面の事象の地平で包まれた通常の空間であると定義できる。そもそもブラックホールの内部などというものは存在しない(ブラックホール表面とは事象の地平であると定義すればの話。つまり観測者が事象の地平を超えるなどということは原理的に無い)。




上図はブラックホール宇宙論による空間構造である。しかしこれは主流理論(ビッグバン宇宙論)によるものとほぼ同じでもある。ビッグバン理論では遠方ほど宇宙の初期となり、最遠方は宇宙誕生の瞬間、つまりビッグバンの特異点である、という論理が成り立つ。そしてその前に天体の後退速度が光速度に達する場所、つまり事象の地平が存在し、それで全天が覆われている、という構造である。

つまりビッグバン理論でも特異点とそれを覆う「事象の地平」が全天に広がっていると表現できる。

従ってブラックホール型宇宙とビッグバン宇宙論による宇宙構造は空間構造が全く逆であるにもかかわらず、地球上の観測者から見れば宇宙の基本構造は同じと観測され、識別は難しいだろう。

次の図は主流理論であるビッグバン宇宙と本論によるブラックホール(BH)宇宙の類似性を図示したものである。ここで「全天を覆う特異点」という表現をしているが、観測者から見て事象の地平までが実在であり、その先は存在しないので、この図も正しくはない。概念として書いてみただけである。遠方の宇宙が拡大されて見えるという図解も誤解をまねくかもしれない。

ビッグバン宇宙でも初期宇宙ほど小さかったのだから、観測者から見た視野角に含まれる宇宙のサイズは遠方ほど小さかった、最遠方は宇宙誕生の瞬間で面積はゼロだった、ということが表現したかっただけである。
   


  


6-2. ブラックホール型宇宙の概要                           


この宇宙空間の外に「超宇宙空間」とでも呼ぶべき空間があった。そこには現在観測される宇宙空間の総質量よりも何桁も大きなブラックホールが存在した(1つとは限らない)。

以下、この超巨大ブラックホールを「宇宙ブラックホール」と呼ぶこととする。


超宇宙空間は事象の地平外だから、この世界から観測することは不可能な別空間である。従ってどのような空間だったのかは確認する手段はない。しかし物質は電子と陽電子,陽子と反陽子が対生成,対消滅を繰り返している超高温の世界であったであろうと推定される。

そして「宇宙ブラックホール」に落下する物質,エネルギーが重力エネルギー獲得で更に加熱され、そしてシュバルツシルト半径内に入って急速に冷却され、現在の宇宙空間が形成されたとするのがブラックホール型宇宙の概要である。つまりわれわれの観測している宇宙空間というのは「宇宙ブラックホール」のシュバルツシルト半径内の閉鎖空間(あくまで事象の地平の外の通常空間)であり、中心に向かって自由落下しつつある状態である。



  


6-3. ブラックホール型宇宙論による観測事実の解釈          


(1)宇宙は超高温から始まった

シュバルツシルト半径の外の世界は超高温だった。これはもともとその様な空間だったのに加え、宇宙ブラックホールへの落下過程で重力エネルギー獲得によりさらに超高温になった。


(2)現在の宇宙は暗く極低温である事の必然性

現在の宇宙が極低温(約2.7K)なのは「宇宙ブラックホール」のシュバルツシルト半径内に入ったことで「事象の地平」で覆われたため。

事象の地平は一方通行なので放射(電磁波)も完全に吸収されるため、これで包まれた空間は絶対零度に向かって冷却されていった。


(3)膨張宇宙(ハッブルの法則)→ 距離の遠い天体ほど大きな赤方偏移が観測される事実の説明

この観測事実はビッグバン宇宙論では「遠方天体ほど高速で地球から遠ざかっているためのドップラー効果によるものであり、地球からの距離と後退速度はほぼ比例する」と説明されている。

しかしブラックホール型宇宙論では全ての天体は等速運動になるとしているので、天体間の距離はほぼ一定を保つ。そのためドップラー効果による赤方偏移ではないことになる。

ブラックホール型宇宙ではこの赤方偏移は重力ポテンシャルの差による重力赤方偏移で説明している。ビッグバン理論では空間膨張メカニズムの本質を説明しきれていないが、ブラックホール宇宙論ならば通常の重力による重力赤方偏移なので新たな概念を持ち込む必要がない。


(4)反物質がほとんど存在しない謎の解明

先にふれた超宇宙空間で複数の宇宙ブラックホールが存在したとする。ここに落ち込む落下物の電荷バランスが崩れると、ブラックホールは帯電する。

もし何らかの原因でブラックホールが正(+)に帯電した場合、質量が大きく直進性の高い陽子は少しくらいの電気力では反発できず重力で宇宙ブラックホールに引き寄せられる。重力場に引き込まれる反陽子と陽子の確率に大きな差はない。

しかし同量の電荷を持つにも関わらず質量の極端に小さい陽電子は正に帯電した宇宙ブラックホールにより遠ざけられる。そしてブラックホールの周辺には通常電子の濃度が非常に高い、負(−)に帯電した雲を形成する。これにより宇宙ブラックホール全体としては電気的中性を保つ。しかしこの強く負(−)に帯電した雲で反陽子はブラックホールに近寄り難くなる。

そのため、この電子の雲を通過できる重粒子の多くは正電荷を持つ陽子となり、その通過した陽子は電子の雲の内側に落ち込み、宇宙ブラックホールに向かい加熱される。その途中で一部の陽子は衝突を繰り返し、ヘリウム原子核に変わる。

そして宇宙ブラックホールに近づくほど空間温度は下がるため、この段階で重力による集合が起こり始め、銀河団の元が形成され始める。落下物質は角運動量を持っている可能性が高く、降着円盤を形成している可能性もある。しかし多くの場合は陽子,ヘリウム原子核の状態で宇宙ブラックホールに落ち込む。

正に帯電したブラックホールの周りに作られた電子による負(−)に帯電した雲から電子は宇宙ブラックホールに落ち込み、宇宙ブラックホールがそれ以上極端に正(+)に帯電するのを防ぎ、ほどよいバランスを保つ。正に帯電したブラックホールに反発した陽電子も負に帯電した電子の雲に吸引されるが、極小なのでほとんど再結合する事なく電子の層を通過してしまう。つまり陽電子は電子の雲の周りに低濃度で分布し、その一部が電子の雲の中を往復運動する。

反陽子も多少はブラックホールに落下するだろうが、それらは陽子と反応して消失した。それらがシュバルツシルト半径内の内部空間に入り、急激に空間が冷却されて本格的に銀河団が形成されていったが、銀河間の宇宙空間は希薄なので、大部分の陽子,ヘリウム原子核は電子を獲得できず電離したままである。

このようにしてこの宇宙ブラックホールには陽子とヘリウム原子核及び電子のみが落下するようになり、現在の正物質のみで構成される宇宙が形成された。しかし超宇宙空間には負に帯電した宇宙ブラックホールも同率で存在するであろう。そこでは反物質のみからなる宇宙になる。

正に帯電した宇宙ブラックホールの周りを負に帯電した電子の雲が包むという構造は奇しくも原子構造と同じである。


(5)銀河の回転運動の謎を解明

銀河はその観測される密度分布から予想される回転速度分布に反した運動をしている事が知られている。

具体的には周辺部の回転速度が中心からの距離に関係なく一定速度とになっている。この様な運動になるためには半径r以内の総質量M(r) はrに比例しなくてはならない。

      v2/r=Gm(r)/r2   より r以内の質量m(r) = (v2/G)r      従ってvが一定になるためには m(r)∝r

しかし実際に観測される質量分布はこの結論とは異なる。銀河の質量は中心部に強く分布し周辺部は希薄である。このことから、銀河には観測にかからない大量の質量(ダークマター)が存在するのではないかと言われている。しかしこれは各種候補があるものの、まだ十分には解明できていない。


ダークマター(missing mass)の候補として本論では大きくEfを放出して質量の消失した電子−陽電子結合体(慣性質量の質量項目がゼロであるが重力作用は保存されている)や陽子−反陽子結合体などを上げてきた。これにより銀河回転運動の謎は説明可能。

これら消失質量は真の質量は持つが、慣性質量(=重力質量)がゼロなので、重力場による集中作用が働かず、分散して分布する。またブラックホールも強い重力場をもつが、慣性質量はその真の質量よりもかなり小さい物体としてカウントされる。

銀河の観測されている物質分布は指数関数的に銀河中心に近いほど高くなる。つまり半径r内の質量m(r)∝r^nとすればnは1以下となる。

しかし前記した通り電子,陽電子結合体等の消失質量は宇宙にほぼ均等に分散分布する。そのためこれによる反径r内の総質量m(r)はr^3に比例で増加する[m(r)∝r^3]。

また銀河中心のブラックホールにより消失質量が捕獲されるため、中心部近くの分布が薄くなっている。これらのバランスにより銀河周辺では総質量(真の質量m0)が r にほぼ比例する領域ができる。

このため銀河周辺部では回転速度が中心からの距離に関係なくほぼ一定速となっている。

                       
(6)背景放射とその等方性(観測事実)の説明

ブラックホール型宇宙論によれば、どの方向でも遠方ほど宇宙の中心の一点に向かうことになり、実は宇宙の中心付近の狭い範囲が全天に拡大されて見えていることになる。しかしこれはビッグバン宇宙論でも遠方宇宙は初期宇宙なので小さかったはずであるから同じことである。

 ブラックホール型宇宙の場合、高温空間がシュバルツシルト半径内に入り冷却されたが、背景放射は事象の地平付近のため、時間が大幅に遅れるために過去の高温宇宙が大きな赤方偏移を受けながらも観測されている。


背景放射の当方性については空間構造が観測者を中心にして常に完全当方性になるので、観測される背景放射も当方性が強い。


観測されている背景放射の当方性はかなり強いが、それでも背景放射に対して我々の地球は高速で運動している事がわかっている。つまり背景放射のある部分はやや青方偏移し、その対極はより赤方偏移が大きい。このことはブラックホール型宇宙論により説明可能。つまり宇宙ブラックホールに現在の宇宙を構成する物質が落下するとき、ブラックホール中心に対して角運動量を持っていた、とすればよい。このことはむしろ当然と考えた方がよい。現在の宇宙を観察しても、宇宙の塵が重力収縮すると必ず角運動量を持ち、回転する。


(7)遠方宇宙ほど若い(観測事実)の説明

ブラックホール型宇宙では遠方ほど先に落下した空間なので、遠方宇宙ほど古いことになる。ただしこれは光の到達時間を無視した場合であり、ブラックホール中心に対する落下速度がほぼ光速度であることを考えると宇宙の年齢は遠方ほど若いと観測される。つまり遠方の光情報が届くころには自分の方が宇宙ブラックホールの中心に近づいている。

また遠方宇宙は大きな重力赤方偏移を受ける事から分かるように重力ポテンシャルの差が大きく、そのため時間の進み方が遅い。そのため遠方天体の年齢は更に若く観測される。

                      
(8)宇宙の大構造の成因

この宇宙はかなり初期に銀河群が形成され、またそれら銀河群が大きな泡状又は柱状に分布するという大構造をもっている事も明らかになっている。


これらはビッグバン理論では説明の困難な事である。ビッグバン理論では初期宇宙はかなり均質でなくてはならず、短時間で銀河や銀河群が構成する宇宙の大構造を作るとするのは極めて困難がある。(ビッグバン宇宙論では一回転するのに数億年もかかるような渦巻き銀河が、初期宇宙の均質状態から10億年程度で作られた、ということになり、ふつうに考えればあり得ない。)


しかしブラックホール型宇宙ならば、この「宇宙ブラックホール」に落ち込む段階で、ある程度不均一な状態で物質が落ち込んでいた事は予想されることである。例えば降着円盤から落下してブラックホールに落込む物質は、連続的ではなく脈動的だろう。これはクエーサの発光脈動等の観測事実によっても想像できる。


従ってブラックホール型宇宙では初期宇宙でもすでに物質分布の大きな不均一があった事は当然の事として扱える。   


(9)宇宙の加速膨張のメカニズム解明

ビッグバン宇宙論では宇宙の膨張は重力作用により減速されていくものと予想されていた。しかし近年の観測では逆に膨張が加速しているとの結果がでている。これもビッグバン理論では説明が難しいところである。

ブラックホール型宇宙であるが、ブラックホールの項で説明したとおり、ブラックホールのシュバルツシルト半径内に落ち込んだ自由落下観測者から見ると裏返しの空間構造になる。これは「そのように見える」のではなく、観測者座標では実際にそのような空間構造なのである。


@


A

B



C


D



E

この宇宙では、重力の中心(宇宙ブラックホールの中心質点)が視界の最遠方全体(全天)に広がっている様に観測される。

この宇宙(裏返し空間)では観測者は常に宇宙の中心にいるように見える(観測者の座標では実際にそうである)

ここは全方位で観測者から距離が離れるほど重力ポテンシャルが低くなる空間構造であり、そのため遠方ほど時間の経過が遅れる。そしてある距離で完全に時間が停止する。ここが観測者から見た宇宙の終端であり、事象の地平である。

我々の宇宙の落下速度は中心核に対してほぼ光速度となっている。そのため、この宇宙の終端である事象の地平との距離はほぼ光速度で縮まっている。

全ての天体は中心核に対して等速運動となっている。観測者の座標で見れば、観測者と全ての天体との距離は基本的には変化しない。しかし重力ポテンシャルの差があるので、遠方の天体ほど固有時間が遅くなり、赤方偏移していく。

時間とともに重力勾配は強くなっていく。すると天体間の距離が一定であった場合でも赤方偏移は時間の経過とともに増大していくことになる。これが地球の観測者から見て「空間の膨張が加速している」と判断させた原因である。




















 



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