質量欠損現象から導いた物理理論と宇宙構造

**


      Fintech.co.jp                 目次へ    第6章へ


 第7章.将来の究極的エネルギー源 


 この章の概要
       人類が利用できる最後のエネルギー源    


重力による結合エネルギーはブラックホールを利用すればどんな物質でも数十%以上(理論限度は100%)の効率でエネルギーに変換できる可能性をもつ。ブラックホール同士の結合によっても巨大な重力エネルギーが取り出せる。

ブラックホールに閉じ込められた真の質量は決して外部に取り出せない。しかしエネルギーは取り出せる。本論によるブラックホール利用発電によりブラックホールの慣性質量が減少して、その分の巨大なエネルギーが取り出せる。このエネルギーを利用すれば将来の人類がエネルギーに不足することはないであろう。

この宇宙空間の真の質量のブラックホールへの集積、という方向は一方的に進むだろう。エネルギーはブラックホールから取り出せるが、取り出す事によりブラックホールの慣性質量は減少していき、最終的にはゼロになることもあり得る。

ここで排エネルギーをブラックホールに落とし込み、それの慣性質量を増大させ、それを2個使って本論の発電方法によりエネルギーを取り出せるが、その結果としてブラックホールが大きくなっていくという一方通行の過程が進む。つまり全体としては熱力学第二法則(エントロピー増大則)は健在であり、この宇宙がエネルギー的にも週末に向かう方向には変わりが無い。しかしブラックホール発電により、その時期を大幅に延長できる。

  


7-1.熱力学第二法則の検討                             


            大質量物体はブラックホールとする。



上図は「11.結合する両者に大きな質量差がある場合の考察」で説明に使った図である。ここで「大質量物体」を巨大ブラックホールとしてみる。すると微小物体をゆっくり結合(落下)させていくと微小物体側の発電モーターから電気エネルギーが取り出せる。この取り出しうる結合エネルギーEfの最大値はブラックホールの場合、mBc^2 に近い値となるだろう。つまり微小物体の質量は 100 %近くまで電気エネルギーに変換され、mBという慣性質量は激減し、極端な場合は消滅するかもしれない。


微小物体は何でもよいことになる。われわれが核エネルギーを使い尽くした廃棄物(鉄とか鉛など)でも 100%近くエネルギーに変換できることにもなる。また廃棄物が廃熱(長波長電磁波や廃熱)だったとしても、それを蓄熱材に吸収させたり、又は小さいブラックホールに吸収させて、それらを大きなブラックホールに落下させていけば、廃熱すら良質な電気エネルギーなどに100%近く変換できることにもなる。


ブラックホールにどうやってヒモを付けるかとかいった問題は技術的問題であり原理的な話では無視してよいだろう。するとこれでは熱力学第二法則が破られているかに見えるが、ブラックホールが増大していくという方向は非可逆的であり、全体的には熱力学第二法則は壊れない。


次項でこのブラックホールからエネルギーや質量を取り出す具体的方法を考察する。



  


7-2.ブラックホールから質量エネルギーを抽出する方法                 

前項はブラックホールを利用して物質をエネルギーに変換する方法であったが、今度はブラックホールそのものからエネルギーを取り出す方法である。原理的な話だけでなく、具体的にブラックホールのエネルギー(慣性質量)を取り出す方法について考察する。

色々な方法論があるが、慣性質量が同程度のサイズのブラックホール2個で連星系をつくる方法が効率的にエネルギーを取り出せると考える。現実的ではないだろうが、エネルギー抽出原理が非常に分かりやすい。

ブラックホール連星が存在すれば問題ないが、見つからない場合には手頃なサイズのブラックホールを運搬してこなくてはならない。この方法はブラックホールにヒモをつけてロケットなどの駆動装置で引っ張る。

ブラックホールにヒモを付けるというのはともかく、引っ張るのは可能であろう。例えば運搬したい方向の直前を普通の天体に横切らせるなどの方法(いわゆる重力スイングバイ)でもブラックホールを任意の方向に加速し移動させる事ができる。

そして2つのブラックホールが合体しない程度のコースで接近させていき、連星を作る。そのままでは長楕円軌道にしかならないので、程よくブレーキをかけるなどして扱いやすい共有円形軌道の連星を作る。この軌道半径は大きい方が最終的に得られる総エネルギー理論値は大きいが、発電装置が巨大になるので初期投資エネルギーが過大となりエネルギー収支でかならずしも有利ではなく、このような条件によりおのずと適正な半径が決まるだろう。

ブラックホール連星からエネルギーを取り出す方法は原理的には簡単である。例えば下図のように重力同期モーターを構成し、それに発電機を結合すれば電力の形で取り出せる。この連星はエネルギー損失がない限り軌道半径は変化しない。なんらかの方法でエネルギーを取り出すと軌道半径が縮んでゆく。ただし単純には縮んでくれないので、随時軌道修正(円軌道⇒擬楕円軌道⇒円軌道に修正)は必要となる。

    

連星系1つでは絶対静止系に発電機を固定する必要があるが、これは困難だろう。これを解決するにはもう1対の逆回転するブラックホール連星を準備し、その2対の連星で更に連星系を構成(2重連星系)し、それぞれで重力同期モーターを構成させる。そしてその2つの出力軸に発電機の電機子と界磁を結合させる事により、絶対静止系がなくても電力を取りだせる。

重力同期モーターは最初にブラックホール連星と同期回転するまでエネルギーを供給して回転運動を与えなくてはならない。しかしいったん同期すると連星に引きずられて回転を維持するので、ここで発電機の界磁に通電すると、発電を始める。発電量は同期が外れない範囲で界磁電流を強めれば増大していく。


この装置は完全な安定系ではないので、時々軌道修正が必要であろうが、それに要するエネルギーはエネルギー収支的には無視してよい。
 
尚、この原理による重力エネルギー抽出装置はブラックホールに限るものではなく、通常の物体や天体でも同様にEf≒G*mA*mB/L から計算される重力結合エネルギーが取り出せる。

ただしこの式から分かるように両質量の積が大きくないと、取り出せるエネルギーは大きくならない。少なくとも太陽質量程度はほしいところ。さらに太陽クラスの通常の恒星は密度が低いので、潮汐力を無視してもLは百数十万km程度までが限界。

しかしこれが同質量のブラックホールや中性子星ならLは数〜数十km程度まで接近できるので、取り出せるエネルギーは通常恒星の場合の10万倍程度にもなる。
 
「ブラックホールからはエネルギーも何も取り出す事はできない」と言うのが定説のように見え、たしかに単独のブラックホールを考えると、その結論は正しいのかもしれない。しかし上記のような原理でブラックホールから重力エネルギーが取り出せる事も明白であろう。

このようにしてブラックホール連星からどんどんエネルギーを取り出していき、軌道半径がそれぞれのシュバルツシルト半径の和のところまで収縮するころには2つのブラックホールの総質量の1割以上が電気エネルギーとなっていると考える。更に近づくと二つのブラックホールの総質量のほとんどがエネルギーとして取りだせるかもしれない。

このような100%ちかくまでエネルギーに変換されるであろうと推定される領域(シュバルツシルト半径の和よりも小さい軌道半径まで接近)では先のニュートン理論による式は全く正確ではないだろうが、ニュートン力学がそこそこ適用できそうな領域レベル(例えばシュバルツシルト半径の和の1〜10倍の距離)での考察でも1〜10%程度なら問題なく重力エネルギーが取り出せるだろう。

たとえ1〜10%とはいえ核エネルギーに比べても1桁以上大きなエネルギーが得られる事になるし、化学エネルギーにくらべれば1000万倍も大きい。しかも核エネルギーのように物質を選ばない。人類の遠い未来に残された究極的なエネルギーとしては、この重力エネルギーになる可能性が高い。



    尚、上記は原理的な話であり技術的、経済的な問題は無視している。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  結合エネルギーの試算

  質量mAと質量mBのシュバルツシルト半径

  Sra=2GmA/c^2   Srb=2GmB/c^2

  両者がシュバルツシルト半径のところまで近づいたときの両者の結合エネルギーEfをニュー
  トンの式で求めると

  Ef≒G*mA*mB/(Sra+Srb)=G*mA*mB/(2G(mA+mB)/c^2)
    ≒mA*mB*c^2/2(mA+mB)

  mA=mBとし、mA+mB=mとすれば

  Ef≒m*c^2/8   
  
  つまりシュバルツシルト半径の和まで接近したときの結合エネルギーは総質量の1/8。総質量
  と等しくなるのはシュバルツシルト半径の和の1/8まで接近したとき。もちろんこの結論はニ
  ュートン理論の範囲であり、このような領域では全く正確ではないだろうが参考まで。   
  
 
                 目次へ                  第6章へ

                          Fintech.co.jp