質量欠損現象から導いた物理,宇宙構造

 
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 第4章.Missing Mass の正体


 この章の概要と結論   慣性質量ゼロで能動的重力質量のみの存在がありえる。


前章の結論をふまえ、本章での結論としては電子と陽電子が電気力で結合すると、結合エネルギーが両者の真の質量と等しくなり、両者の質量が完全に消失すると結論する。(慣性質量保存則よりエネルギー項のみの存在になる。具体的には光子エネルギーになる)

しかし前章での結論のとおり重力作用に関係する真の質量M0は変化しないので重力作用は消えない。この電子−陽電子結合体は非常に小さな重力作用しか持っていないが、その数が膨大である可能性が高く、この宇宙の振舞いに大きな影響を与えている可能性がある。

また陽子と反陽子も同様に結合により一体化し、核力,電気力による結合エネルギーがそれらの総質量に等しくなることにより質量が完全に消失する。中性子,反中性子の場合も同様である。

これらハドロン結合体の真の質量は電子−陽電子対に比べ圧倒的に大きい(約1600倍)ので、1個あたりの重力作用も格段に大きい。

この宇宙に存在するはずだと予想されていて、まだ発見されていないmissing massが前記した消失質量だとすれば、おそらく全て説明がつく。


ブラックホールはそれ自体が時間速度比がゼロの重力場に落ち込んでしまったものである。ブラックホールはその生成過程ですべての重力結合エネルギーを外部空間に放出してしまった場合には慣性質量がゼロのブラックホールもありえるが、ブラックホールはその特殊な空間構造によりエネルギーをも閉じ込めることかできるため、それなりの慣性質量(受動的重力質量)を持つものが通常であろう。

  


  4-1.電子-陽電子結合体                               





観測事実として陽電子と電子は結合することにより、その質量の全てがエネルギーとなり、質量は完全に消失し、エネルギーが0.51GeV×2個=1.02 GeV の光子となる事は周知の事実。そして1.02 GeV というエネルギーは両者の総質量×c^2 に等しいので、ここでも厳密に質量エネルギー保存則は成り立っている。

また、1.02 GeV以上のエネルギーを持つ光子は物質に変換される。これは電子と陽電子が必ず対になって発生する(対生成)。

これらの現象を合理的に説明できる標準的な理論は既に存在するが、ここでは結合エネルギーが大きいために質量が消失した(結合エネルギー≧総質量×c^2)として説明を試みる。

この解釈によれば、真の質量は消失したのではなく前記したように時間軸方向に無限に伸ばされて3次元空間での断面積がゼロになっている、と理解する。

電子−陽電子対の真の質量M0は変化しないが(結合エネルギー≧総質量×c^2)になりうるので、両者が接近し結合すると
      慣性質量M=質量項+エネルギー項=(質量M0の時間軸断面積)+エネルギー項 →一定

の式から質量項が完全に0になり、エネルギー項のみの存在になる。  

電荷間の電気的結合エネルギーはEf=1/(4*π*ε0)×q1*q2/L だから、これから「結合エネルギー」と「電子2個分の質量エネルギー換算値」が等しくなる距離を求めると約1.41×10^-15 mとなった。
  
  2*me*c^2=qe*qe/(4πε0*L)  → L=qe*qe/(2*me*c^2*4*π*ε0)

  L=(1.602×10^-19)^2/(2×9.11×10^-31×(3×10^8)^2×4π×8.85×10^-12)
    ≒ 1.41×10^-15 m

このときの結合力は F=9×10^9×(1.602×10^-19)^2/(1.41×10^-15)^2≒1.16 [N]

電子の大きさというものは厳密な測定が不可能に近く正確には測定されていないが、10^-18mよりも小さいだろうとされている。質量が電子よりも約1840倍も大きい陽子の大きさが半径約1.2 × 10^-15m とされているから、そんなものなのだろう。

すると電子と陽電子は完全に結合する以前に電気力による結合エネルギーが両者の質量と等しくなり、それ以上接近できなくなる。そしてその結合エネルギーを光子として放出して、自身の慣性質量は消失する。

しかし電荷(電気力)は保存されるので、電子−陽電子結合体は電荷間距離が約 1.4×10^-15m程度 の電気双極子となるだろう。これは慣性質量の質量項がゼロである。

この宇宙空間は電子と陽電子の結合により対消滅した消失質量で満たされている可能性があると考えられる。
                                           
これらの起源は宇宙の誕生段階にある。そしてそれに大きなエネルギー(1.02GeV以上の光子)が作用すると電子と陽電子の結合が切れて両者が対生成する。

真空中では対生成が起こらないことから、光子は直接には電子−陽電子結合体には作用しないのだろう。他の物質を介してのみ電子−陽電子結合体は光子からエネルギーを受け取る事ができる。



  

  4-2.ダークマター,Missing mass の候補としての消失質量        


前項でも説明したが、電子−陽電子結合体は消失質量となる。これは慣性質量がほぼゼロである。しかしこの結合反応で消失するのは慣性質量の質量項のみであり、電荷,電場,重力,角運動量等は保存される。真の質量も保存されるので重力作用も変化しない。

電子−陽電子結合体の重力作用は極めて小さいが、その数が膨大であり、宇宙全体の重力バランスに大きな影響を与えている可能性が高い。

試算: 半径100億光年の空間で空間1cm^3当たり1個の電子-陽電子結合体があったとすれば半径100億光年の容積は V=3/4πr^3=1.99×10^78 m^3 よって総数は1.99×10^84個。すると総質量は W=1.99×10^84×1.82×10^-30=3.62×10^54 kg。これは現在観測されている事実から推定できる宇宙の総質量(各種天体の質量総計)より多い。

電子−陽電子結合体は慣性質量の質量項がゼロなので、エネルギー項もゼロに近づくと、その存在確率も拡散する。他の天体の重力場の影響を受ける事もほとんど無く宇宙空間を漂う。

また陽子と反陽子も同様に結合により一体化し、核力,電気力による結合エネルギーがそれらの総質量に等しくなることにより慣性質量が消失する。中性子,反中性子の場合も同様である。中性子は電荷を持っていないように見えるが、内部構造として陽子は+2/3電荷のトップクオーク2個と−1/3電荷のダウンクオーク1個から構成され、中性子は+2/3電荷のトップクオーク1個と−1/3電荷のダウンクオーク2個から構成さている。そしてこれら正反粒子の結合には各種の核力,グルーオンも加わるだろう。




また例えば見かけ上、「光子→(陽子+反陽子)→光子」の変換がおこることからして、陽子−反陽子の反応はクオークレベルでばらばらに反応するのではなく、陽子と反陽子がそのままの形で結合,合体したような形になる。

つまり元の陽子と反陽子の領域をある程度保って結合しているため、これに外部からその結合エネルギーよりも大きなエネルギーを与えられると、その結合が切れて陽子−反陽子対が生成する。この様な大きなエネルギーとは通常、高エネルギー光子により与えられる。


このような消失質量は宇宙に充満し、後記する銀河回転運動の謎は、この消失質量の存在が影響している可能性がある。

これら消失質量の微粒子はかなりの速度で移動しているかもしれない。わずかでも慣性質量(エネルギー)を持つと、重力場で加速される。しかし衝突断面積はほぼゼロと考えられ、例えば星と遭遇して引き寄せられても物質と衝突することはほとんど無く、重力場の中心を通過し、すぐにその星を通りすぎてしまう。落下過程でエネルギー(慣性質量)は増えるが、脱出過程でそれを失うので、結局のところ、これら消失質量の持つエネルギーは平均的には変化しない。

しかし衝突コースを通っても、全てが中心を通るわけでは無いので、コースは変化する。そのため、消失質量の動きはランダムになっていく。なお、ブラックホールの場合は別で、これに遭遇し衝突コースをとった場合、その特殊な空間構造により捕獲される。そのため、ブラックホールのある周辺では消失質量の密度が下がるだろう。

銀河小宇宙の中心にはほとんどの場合、巨大なブラックホールが存在するので、銀河系中心付近の消失質量の密度は小さくなるだろう。そのため銀河は特殊な重力場の構造となり、銀河周辺では中心からの距離にあまり関係無く回転速度がほぼ等しくなっている。






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